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2019年11月

2019/11/20

先月号の続きのショートストーリーを書かせて頂きました。銀座のホステスと浮気しているのではないかと、旦那様を疑っている奥様のお話です。
お目を通して頂きまして、爆笑、失笑なさって頂けましたら、とても嬉しいです。

藤井久美子  主人公、小さな電気会社の社長の妻
藤井直樹   久美子の旦那
藤井直人   久美子の一人息子、中学一年生
脇田     UI興信所の調査員
すず     「ル・ジャルダン」の藤井直樹の係

 

≪1≫久美子・ゴルフの予定

夫の「浮気の調査」に私が使えるお金は限られている。結婚する前に溜めていた僅かな貯金と家計を倹約し蓄えたヘソクリの、合せて300万円だ。
UI興信所の「パックコース・B」というのは、専門の所員への相談料と20時間分の尾行の料金がセットになって28万円である。
20時間分の尾行を、依頼主が指定した場所と時刻から開始してもらうことが出来るのがこのコースの魅力である。尾行を終了したいと思えば、例えば直樹さんが急に予定変更をして帰宅したような場合には、余った時間を次回の尾行に回せる仕組みだ。この条項は良心的で気に入っている。
これまで直樹さんの怪しい行動を子細に観察してきたので、どの時間帯を調査してもらうのが効率的なのかは分かっているつもりだ。浮気の証拠をある程度掴んでいる私のような人間には、お得なプランと言えるのではないだろうか。

興信所の所員である脇田と駅前の喫茶店で綿密な打ち合わせを済ませると、少し気持ちが楽になった。会話上手な脇田に慰められて、涙を流せたこともあったのか、気分がスッキリした。
興信所に頼むことには抵抗感があったけれど、勇気を出して相談してみて良かったと思う。脇田が言っていたように、この調査は私が家庭を守る為に必要な“転ばぬ先の杖”なのだ。直樹さんに家庭を壊すつもりはないと信じたいが、ここ最近の遊び方には何かしら以前とは違う感触なのである。虫の知らせとしか言いようがないが、この辺りでお灸を据えるべきだと私の第六感が働くのだ。

駅地下のスーパーで夕食の買い物を済ませてから、直人の塾まで車で迎え行った。今夜の夕ご飯は白身魚のムニエルに人参と卵の炒め物、肉じゃがと豆腐の味噌汁である。
小さい頃は食が細くて心配していた直人だったが、中学生になってからは、山盛りのご飯を三杯もお代わりするほどに食欲旺盛である。「お代わり!お母さんの人参しりしり、最高!」と茶碗を差し出してくる直人の茶碗にご飯を盛っていると、母親として幸せな充実感に満たされる。
そういえば、直樹さんも私の作る人参と卵の炒め物が大好物なのに、ここ暫く作ってあげていないなぁと、ふと思った。
直樹さんは昨夜の朝帰りで寝不足だからなのか、普段よりも早く10時過ぎには帰宅した。「ただいま。夕飯は部下と済ませてきたよ。」と、そっけなく言う直樹さんからは、今夜もお酒の匂いがした。お酒の匂いを嗅ぐと、真夜中のワイシャツの口紅の赤い色が思い起こされて腹立たしくなってきたが、興信所の脇田の声が耳元でリフレインされた。
「旦那様が警戒しないようになさって下さい。浮気を疑っているとか、間違っても興信所を付けているなどおっしゃってはいけません。旦那様には普段通りに接して油断させて、まずはしっかりと証拠を握るのです。」と、脇田はしゃがれた声で言ったのだった。
「お帰りなさい」と、明るい調子で出迎えると、直樹さんは笑顔を見せて、
「よう、直人、今週末のサッカーの試合はお父さんも観にいくよ。」と上機嫌で直人の頭を撫でた。
それから、リビングのソファに寝転んでテレビを付けて、お笑い芸人が暴れている低俗な番組を見始めた。
「直樹さん、あのね、さっき電話があって、大阪の老人ホームに入っているお祖母ちゃんが、あまり調子が良くないのですって。ちょっと見てきたいなぁと思っているのだけれど。」と、計画していた通りに話し掛けた。
「あぁ、確かもう95歳だったけねぇ、それは早めに見舞いに行ってあげたほうが良いだろう。」と、テレビ画面から目を離さないままで、生返事が返ってきた。
「そうよねぇ、いつにしようか、直樹さんの週末の予定を聞いてから決めようと思って。」さりげなく聞くと、
「あぁ、そうなの。今週の土曜日はゴルフ、来週も前の会社の奴らとゴルフだから、少し遅くなるよ。その次はコンペだから、これも遅くなりそうだ。」と、週末の予定を話し出した。
「はーい。じゃぁ、いつにしようかなぁ、直人のサッカーもあるし。」と言うと、「たまには、実家でゆっくりしておいでよ。」と、心なしか声を弾ませたように感じられる。

直樹さんの週末の予定の中で、“昔の会社の奴らとゴルフ”というのが特に怪しいと睨んでいる。直樹さんは父親の会社を継ぐ前に大手の会社で修業期間を過ごしていたのだが、その頃の友達には結婚式のときに会っただけだ。直樹さんとそんなに親しそうにも見えなかった。
それが最近になって急に“昔の会社の奴らとのゴルフ”が増えてきた。鼻が曲がりそうに臭い。来週の土曜日のゴルフは、興信所に尾行してもらう価値がありそうだ。

次の日、脇田に電話して詳しい打ち合わせをした。
UI興信所が調べたところ、直樹さんが行くと言っているゴルフ場には、確かに藤井直樹の名前で8時15分インスタートの予約が入っているそうだ。それならばプレー後の行動を尾行すべきとの認識で脇田と一致した。
「ゴルフの後というのは、かなりの確率で浮気の証拠が取れるものでございます。ご主人様がご自身のお車でお出掛けになられるのでしたら、車種と色とナンバーを教えて下さい。」と、脇田が聞いてきた。
「ええっと、白のレクサスで、品川ナンバーの4188です。」
「4188ですね、承知しました。旦那様のことはどうぞ私どもにお任せ下さい。」脇田は、自信たっぷりに請け合ってから、
「奥様、ちゃんと眠れていらっしゃいますか。食欲がないときでもしっかりと栄養のあるものを召し上がって下さいまし。」と付け加えた。
脇田のしゃがれが声に労わられると、心が落ち着いてくる。

≪2≫すず・「銀座ナイン」にて

高速道路下にある「銀座ナイン」は銀座縁辺の御門通りを挟み、住所は実は新橋である。派手なわりに値段の安いドレスや13㎝のハイヒール、イミテーションの宝石や大振りなイヤリング、お客へのプレゼント用のネクタイやハンカチなど、ホステス御用達の店が連なっている。地下一階はボリューム満点で美味しい昭和の匂いのする食堂街でもある。

「銀座ナイン」二号館の二階にシミュレーション・ゴルフの店がある。今日は、藤井さんと、お友達の安永さんと、その係の茜さんと私とでゴルフの練習をすることになっている。そして今週の土曜日には、この四人のメンバーで本物のゴルフ場に出掛けるのだ。
私は、お客様に連れられて一回だけゴルフに行ったことがある。でも、その一回で懲り懲りして、心がポッキリ折れてしまった。お客様にもキャディさんにも下手くそにも程がある怒られてしまったし、筋肉痛にはなるしで、二度とクラブは握らないつもりだった。
けれど、藤井さんが一緒に行こうと熱心に誘ってくれるので、また頑張ってみる気になってきた。
「銀座にいるなら、ゴルフの会話くらいできないとね。」と、藤井さんは優しく言ってから、
「すずちゃんが行かないなら、茜ちゃんと安永さんと僕の三人で行くしかないじゃないか、寂しいよぉ。」と、甘えっ子のような口調になった。
藤井さんと茜ちゃんが休日に一緒にいるというのに、私が待っているなんてヤキモチが妬けてしまう。どうしてもゴルフに行かなくちゃ。
けれど運動神経が悪いのは子供の頃から折り紙付きだ。私のボールは遠くへ飛ばないどころか、前にさえも進まない。
とうとう藤井さんが、
「すずちゃんが打つときには真横にいても危ないね。ゴルフ場でも後ろの安全な場所に居るようにしないと。」と言い出す始末である。
一緒に行く茜ちゃんは21歳だけれど、小さい頃からお父様にゴルフをならってきたそうで、目標スコアは110だとか言っている。私ばかり見劣りして、引き立て役になりそうで悔しい。
「ボールをよく見て、頭を動かさないで!」と、藤井さんが私の前に立って頭を押さえてくれる。
教えてもらうのは嬉しいけれど、藤井さんが私を見ていると思うだけで舞い上がってしまって、余計にちゃんとボールに当たらない。
「もう半歩、ボールに近づいてごらん。もっとお尻を突き出して、足を曲げるんだよ、ああああ!曲げ過ぎだ。」
難しい。藤井さんからアドバイスして貰う程に、ますますボールに当たらなくなってきた。土曜日のゴルフは大丈夫なのだろうか。
「困ったなぁ、とにかくボールから目を離さないこと!軽くテンポよく振ってごらん!」
こんなヘボでは連れて行けないと、藤井さんが言い出したらどうしよう。そう考えただけで涙が出そうになった。思わず鼻をすすってしまうと、
「わぁ、すずちゃん、泣いているの?泣かせちゃったかな。厳しく教え過ぎているよね。ごめん、ごめん。」と、藤井さんが私の肩に手を乗せてくれた。

藤井さんと安永さんがビールを飲み始めて、私と茜ちゃんもウーロン茶を飲んで一休みした。
ラインが鳴ったので何かなぁと思ったら、藤井さんから私のショットの動画が送られてきた。いつの間に撮っていたのだろう。
動画に映っている私は、クラブを大きく振り上げて空振りして、もう一度、振り上げてちょろっと当たっている。とても恥ずかしい。
「ほら、こんな感じで、へっぴり腰になっているだろう。もっとコンパクトなスイングしてごらん。」と、藤井さんが私のスマホを覗き込んできた。

≪3≫久美子・Amazon

直樹さんのゴルフ用の靴がベランダに干されている。普段よりも念入りに靴が磨かれているような気がする。直樹さんが“昔の会社の奴ら”とのゴルフのときは、準備が早くて派手めなウエアを選んでいると思う。クラブを点検して磨き、雨具を揃えてボールを入れる、そんな一つ一つの行動が胸にチクチク突き刺さるのだけれど、今回に限っては、少々の余裕がある。きっと必ず浮気の証拠を掴んでぎゃふんと言わせてやるのだ。

土曜日の尾行の決行を心待ちにしている昼下がりのことだ。自宅のチャイムが鳴って、直樹さん宛にAmazonから郵便が届いた。
DVD、漫画、健康食品、バッグやゴルフ用品まで、直樹さんは、通販が好きらしく我が家にはいろいろな段ボール箱や包み紙が届く。
直樹さん宛の荷物を私が開けることはないのだが、灰色のビニールの封筒の手触りがふと気になって手を止めた。妙に柔らかな触感だが、いったい何が入っているのだろう。ゴルフの靴下か何かだろうか。好奇心に駆られて、私はそうっと封筒を開けてみた。
封筒の中を覗き込むと、色のついた布が見えた。そうっと引き出してみると、何と男性用のTバックのパンツ、黒と赤と水色の3枚セットであった。直樹さんがTバックのパンツを身に着けているところなど今までに見たことがない。いつもボクサー型のパンツを愛用しているはずである。
一瞬事態が呑み込めずに、頭がぼーっとなった。見てはいけないものを見てしまった、そんな気がした。
直ぐに脇田に電話をした。
「男の方が下着のお洒落をするのは、見せたい女がいるからです。見せる必要がないのなら、着飾る必要などあろうはずもございません。」
「でも、でも、でも、直樹さんがこんなヘンテコなTバックを穿くなんて、そんなことってあるのでしょうか。信じられません。40歳も半ばを過ぎてこんな形のパンツを穿くなんて、あまりにも恥ずかしいわ、私まで恥ずかしい気持ちです。」と訴えると、
「相手の女もそのように露出の高い下品な下着を身に着けている可能性があります。奥様がおっしゃっていらしたように、やはり相手は銀座のプロのホステスなのでしょう。奥様、どうかそうっと下着を封筒にお戻しになって、元通りに封をなさって下さい。下着が届いたことも、見付けたことも、気が付かない振りをなさることをお勧め致します。この時期に旦那様に警戒されたくないのでございます。」

その夜、直樹さんは11時頃に帰ってきた。今夜はお客の接待で疲れたと言って、ソファに倒れ込むようにしてテレビを付けた。
Amazonで下着が届いたことは何も言わないように素振りにも出さないようにと、脇田に言われていたが、とても我慢が出来なかった。
「そうそう、お父さんにAmazonから下着が届いていますよ。」と言ってしまった。
「えっ!」と、ソファに寝転んだ直樹さんは、そのまま3㎝くらい飛びあがったように見えた。
直樹さんは急に身体を起こして、
「えっと、俺宛ての郵便物は机に積んでおいてって言っているでしょう。」と言った。
「ごめんなさい。私宛だって勘違いしてしまって。ちゃんと宛名を確認すれば良かったのだけれど。」と答えた。
「安かったんだよ。下着の安売りセールがあったからさ、ちょっと買ってみたんだ。」と言うのに
「お洒落な下着だったわ。」と突っ込むと、
「そうかな、えっとお洒落かな、えっと、そう通販って便利だから、つい買っちゃうよなぁ。」と意味不明な言葉を連ねた後に、
「そうそう、お祖母さんのお見舞いは、いつ行くことになったのかい?早い方が良いと思うよ。」と話題を変えてきた。
「今度の土曜日にちょっと行ってこようと思います。直人は部活の後から追い掛けてくれるそうだから、遅くなりそうよ。」
「もちろんだよ、ゆっくりしてきて。ゴルフの予定が入ってなければ運転してあげるのになぁ。」と、申し訳なさそうに言ってきた。
その白々しい演技に余計に怒りが込み上げてきた。
翌朝になってから直樹さんが、
「届いたパンツだけれど、買い間違えたんだよ。クリックの場所を押し間違えたんだろうなぁ。」と、言い訳をしてきた。
「さっきになってパンツを見たけどさぁ、返品って出来るよなぁ。」とぼやくのに、
「さぁ、どうなのかしら。」と、興味のないふうを装って答えた。

≪4≫すず・ゴルフの朝

いよいよ明日は藤井さんとのゴルフの日だ。
携帯の間覚ましを、5時、5時5分、5時10分と、何度も鳴るようにセットした。平日ならこれから寝ようとする時間に起きて、ゴルフに行かなくちゃならない。だけど、絶対に寝坊はできない。
明日の用意は万全だ。ゴルフバックは藤井さんに点検してもらってから、そのまま動かしていない。藤井さんは、ここにボール、ここに日焼け止め、ここにはホッカイロを入れておくよと小物を仕訳けてくれた。ゴルフというのはなんでこんなに持っていくものが多いのだろう。帽子、手袋、ピンが二種類にマーク、考えているだけでも目が回りそうになってくる。なんて面倒臭いスポーツなんだ。

前回のゴルフのときの悪夢が蘇ってきた。あのときは、お姉さんが「下手でも大丈夫だからぜひ来てくれ」って頼まれて仕方なくお付き合いで行ったのだ。けれどもお客様が「練習不足にも程がある」「こんなんでコースに出ちゃいけない」「初心者とは聞いていたが、ここまで下手とは知らなかったぞ」と怒り出してしまった。キャディさんにも「グリーンの上で飛んだら駄目!」「走って!走って!」「早く打って!考えても同じ!」と注意されっ放しだった。

あれから何度も練習もしたし、藤井さんには私のショットを確かめてもらったのだから大丈夫とは思うけれど、目を瞑っても寝付かれないくらい心配になってきた。
『ゴルフは、どんなに下手でも良いんですよね。連れて来なければ良かったなんて、思わないで下さいね。おやすみなさい。』と、藤井さんにラインを入れた。

≪5≫久美子・老人ホーム

土曜日の当日、いつものように直樹さんは私を起こさないようにそうっと家を出て行った。
ベッドの中から車庫が開くキイキイという音を聞きながら、
『今、夫が家を出ます。』と、脇田へラインを入れた。
『承知しました』と、直ぐに返事が来た。

昼過ぎに家を出て祖母の老人ホームに向かった。東京駅で文明堂のカステラと頼まれていた鰻弁当を買って新幹線に乗り込んだ。
新大阪駅で半年ぶりに父と母と会った。相変わらずに仲睦まじい様子である。
「ちょっと痩せたんじゃなか、直樹さんは元気なの?」と、何かを察したのか母が気遣ってくる。
「直樹さんは、お仕事が好調で大忙しみたいよ。」と、強いて元気な振りをした。
年老いた両親に直樹さんの浮気を疑っているなんて、とても言えない。

祖母の老人ホームへ着くと、車椅子に乗せられて祖母がやってきた。私のことを思い出せないようで、ニコニコと笑顔なのだが、知らない人を見るように私の顏を凝視している。祖母の目の色が抜けてグレーになっている。久し振りに会う祖母は以前の快活でちゃきちゃきしていた頃の面影は微塵も残っていない。
「久美子ですよ、東京にお嫁に行った久美子です。」と、祖母の手を握ると、
「おうおう、さっちゃんは元気かい。」と言った。
さっちゃんというのは従弟の子供の名前であるが、説明が面倒なので、適当に相槌で合わせることにした。祖母の皺だらけの冷たい手を握っていると、長生きしても元気でいられる時間は限られていると人間の寿命のことが実感された。
直樹さんも私も年齢を重ねていくのだ。直樹さんだって、いつまでも浮気をするほどの元気は保てないはずだ。そもそも男の人は、何歳くらいまで浮気するものなのだろう。私は、後どのくらい気を揉めば済むのだろう。

そのとき携帯が鳴った。脇田からのラインである。開いてみると一枚の写真が添付されていた。
ゴルフ場のレストランらしき場所に、ゴルフウェアの直樹さんと、もう一人の男の人と、髪の毛の長い二人の女とがテーブルを囲む姿が写っている。レストランの向こう側は、床まで全面のガラス窓になっていて、緑豊かなゴルフ場が見渡せている。テーブルの上には珈琲やビールが置かれていて、きっと反省会なのであろう。

睨んでいた通りに“昔の会社の奴ら”とのゴルフではなかったのだ。だが、これだけで浮気の証拠にはならないそうだ。妻である私に嘘をついて女とゴルフをしているだけで充分に腹立たしいことであるが、肉体関係があると立証されるような写真でないと証拠にはならない。これはネットで勉強したことである。
それにしても興信所の調査員は、いったいどうやってゴルフ場のレストランの中にまで入ったのだろうか。ゴルフ場には予約を入れてプレーをする人しか入れないと思っていた。UI興信所と脇田の実力が頼もしく感じられてくる。
次には、ゴルフ場の駐車場に停めてあるらしい直樹さんの車の写真が送られてきた。白いレクサスで、ナンバーも間違いない。
『これから尾行を初めます』と書かれていた。

≪6≫すず・白いレクサス

ゴルフがこんなに楽しいものだったなんて、ゴルフ場でお腹を抱えて笑っている自分がいるなんて、吃驚している。藤井さんと一緒のゴルフは、以前のお客様とのゴルフとは全く違っていた。
シミュレーション・ゴルフのときにはいろいろと細かく指導してくれたが、今日は一つのアドバイスもなくて、
「本番であれこれ言っても、頭がこんがらがっちゃうでしょう。好きなように打ちなさい。」と言って、プレーのときはショットを打つ度に「ナイスショット!」「いいね!」「今日一だね」と皆が褒め言葉を掛けてくれた。
藤井さんは、ジョークばかり言って賑やかだった。ショットが失敗すると「噛んだ、神田正輝」、ラフでウッドを握っていたら「ラフと女は金使え!」、「銀座の花屋!」と掛け声をして「銀座の花屋は蘭の鉢で稼ぐから、ランで飛距離が伸びるショットのことだよ。」と解説したりする。何でこんなに面白ことばっかり言えるのだろう。
「くだらないオヤジギャグばっかりで、ごめんね。」と、謝られて、私の胸はキュンキュンと高鳴った。
これがゴルフだったんだ。緑の中で白いボールを追いかけて、お互いのショットを褒め合ってジョークで笑って、一緒に遊ぶものだったんだ。

藤井さんの車は、白いレクサスだ。助手席に乗せてもらうと座り心地が良くて、うっとりとして気分が高揚してくる。藤井さんと私が先に車に乗って、安永さんと茜ちゃんに見送られてゴルフ場を出た。

以下次号

最後までお読みになって下さって、ありがとうございます。相変わらずに、下手な文章とベタな設定で申し訳ありません。
今回は、お客様の奥様の気持ちになってみたいと思いましたが、私には主婦の経験がなく、家事も全くできませんで、ちゃんと書けておりますかどうか自信がありません。すみません。
この時期には、一段とご多忙を増してらっしゃることと思います。どうぞくれぐれもお身体をお大事になさって下さい。

「ル・ジャルダン」望月明美


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